2026年9月15日火曜日

本人にしか見せない画像を、CDN 越しに届ける

本人にしか見せない画像を、CDN 越しに届ける
Engineering Blog

本人にしか見せない画像を、CDN 越しに届ける

モバイルアプリのアイテム登録機能に、CloudFront Signed Cookie を使った画像配信基盤を導入した話。設計と実装、そして途中で踏んだ3つの地雷について書きます。

Rails / AWS S3 / CloudFront Backend & Platform 読了時間 目安 8分

モバイルアプリでは、アイテムを写真つきで登録すると、ポイントや保証の管理に使えるようになっている。今回、この「アイテム写真」と「購入証明書の写真」を、これまでのような単純な公開URLではなく、本人だけがアクセスできる形で配信する基盤を作り直しました。この記事では、その設計と、実装中に遭遇した細かいけれど厄介な問題についてまとめます。

01背景と要件

これまで、アイテム画像はクライアントが用意した URL 文字列をそのまま DB に保存するだけの、ごく単純な仕組みでした。しかしアプリの機能拡張にともない、次の要件が持ち上がりました。

Requirements
  • 画像はサーバー経由でアップロードするクライアントから直接ストレージを叩くのではなく、アプリサーバーが受け取って保存する形にしたい(バリデーションと保存先を一元管理するため)。
  • ユーザー自身の画像しか見えないアイテム写真・購入証明書は個人情報に近い。URLを知っていれば誰でも見られる状態は避けたい。
  • 配信はCDN経由にするS3から直接返すのではなく、CloudFrontでキャッシュ・配信したい。ただし「認証つきCDN配信」と「本人限定」を両立させる必要がある。
  • モバイル側の実装コストを抑えるリクエストのたびに署名付きURLを都度発行するのではなく、ログインしてしまえばあとは普通に画像を読み込めるようにしたい。

「本人限定」と「CDN配信」を両立させる方法として選んだのが、CloudFront の Signed Cookie です。署名付きURLだと画像1枚ごとに個別の署名が要りますが、Signed Cookie ならログイン時に一度発行しておけば、あとはブラウザ(アプリ)が自動的にCookieを送ってくれるので、モバイル側の実装がシンプルになります。

02アーキテクチャ

全体は「アップロード」と「配信」の2つの流れに分かれます。どちらも同じ非公開S3バケットとRailsアプリサーバーを経由しますが、認証の仕組みが異なります。

LANE 1 — アップロード LANE 2 — 配信 iOS アプリ URLSession app-server Rails API ImageUploadService CloudFront Signed Cookie 検証 S3 非公開バケット ① POST /items(multipart: image) ② image_url + Set-Cookie put_object ③ GET 画像URL(Cookie同梱) 画像 / 403 署名検証OKの時だけ originへフェッチ
図: アップロード(レーン1)と配信(レーン2)は同じS3バケットを共有するが、認証の仕組みは別。配信側の検証はCloudFrontのエッジで行われ、アプリのコードは一切関与しない。

ポイントは、Signed Cookie の検証ロジックはアプリケーションコードのどこにも存在しないということです。Railsが担うのはCookieを「正しく発行する」ことだけで、検証はすべてCloudFrontのエッジ側で完結します。裏を返すと、発行時にちょっとでも間違った値を作ってしまうと、それを検出できるのは実際にCloudFrontにリクエストが飛んだ瞬間だけ、ということでもあります。これが後述するハマりどころに直結します。

Cookieはいつ発行するか

Signed Cookie は次の2つのタイミングで発行・再発行します。

  • ログイン時 — 毎回無条件に新規発行する
  • 認証つきAPI呼び出し時 — リクエストに3種類のCookieが揃っていない場合だけ、その場で再発行する(アプリの再インストールでCookieだけ消えた場合の保険)

有効期限は10年という、一見雑に見える値を設定しています。アプリ側のログイントークン自体に有効期限の概念が無いため、それに合わせて「実質失効しない」十分に長い値にした、という判断です。

03実装したこと

アップロードAPIは、これまでの「クライアントがURL文字列を送る」方式から、「クライアントが画像バイナリそのものを multipart で送る」方式に変更しました。サーバー側は受け取った画像を検証してS3に保存し、DBには完全なURLではなくS3キーだけを保持します。レスポンスを組み立てる際に、このS3キーをCloudFront配信URLへ変換します。

users/{user_id}/items/{item_id}/case/{timestamp}-{random}.jpg
users/{user_id}/items/{item_id}/purchase_certificate/{timestamp}-{random}.jpg

DBに完全なURLではなくキーだけを持たせたのは、配信ドメインを後から変更しやすくするためです。実際、開発環境と本番環境で配信ドメインが異なるため、この一段のクッションが効いています。

04ハマったところ

設計自体は素直でしたが、実装の過程で3つ、地味に厄介な問題にぶつかりました。いずれも「ローカル開発環境には本物のCloudFrontが無い」ことが発見を遅らせた共通点です。

全画像 403

ワイルドカードは「カスタムポリシー」でないと効かない

問題Signed Cookieには「既定ポリシー(canned policy)」と「カスタムポリシー(custom policy)」の2種類があります。既定ポリシーはCookieに有効期限しか含まず、CloudFront側が実際にリクエストされたURLからポリシーを再構築して検証します。今回のように users/{user_id}/* というワイルドカードを含むリソースを許可したい場合、既定ポリシーでは検証時に組み立て直したURLと署名対象が一致せず、問答無用で403になります

気づいたきっかけローカル開発環境には実物のCloudFrontが存在しないため、この不具合はテストでは一切表面化しませんでした。実際にAWS SDKのCookie発行ロジックを手元で動かし、生成された署名を実際に検証してみて初めて気づく類の問題です。

解決ポリシーJSONを自前で組み立てて明示的に渡す、カスタムポリシー方式に切り替えました。発行されるCookie名も変わる(CloudFront-ExpiresCloudFront-Policy)ため、関連するテストやドキュメントもあわせて追随させています。

署名が壊れる

フレームワークがCookieの値を勝手にURLエンコードしていた

問題CloudFrontの署名付きの値は、通常のBase64ではなく+ = / をそれぞれ - _ ~ に置き換えた独自形式です。ところがRailsのCookie機構は、値をSet-Cookieヘッダーに書き出す際、内部でURLエンコード処理を通しており、この~%7Eに変換されてしまっていました。

送出された値
Signature=abc~def~ghi
実際にブラウザが保持する値
Signature=abc%7Edef%7Eghi

ブラウザ(アプリ)はSet-Cookieの値をそのままのバイト列として保存・送信するだけなので、%7E~には戻りません。CloudFront側はこの3文字を「1文字の~」として解釈できず、署名データの一部を読み違えて検証に失敗します。

気づいたきっかけログインもアイテム登録も普通に成功し、返ってくる画像URLも一見正しく見えるため、切り分けが非常に難しい壊れ方でした。実際にレスポンスの生ヘッダーを見て、値の中に%7Eが複数含まれていることに気づいたのがきっかけです。

解決RailsのCookie機構(フレームワークによる自動エスケープ)を経由せず、Set-Cookieヘッダーの文字列を自前で組み立てて直接レスポンスに載せるように変更しました。値自体はエスケープが不要な文字種(英数字と- _ ~のみ)だったため、素通しで問題ありません。

型が壊れる

multipartはネストしたJSONを運べない

問題購入証明書登録APIでは、画像とあわせてAI判定結果(金額や店舗名などを含むJSONオブジェクト)も送る必要があります。しかし multipart/form-data は「名前=文字列」しか運べないため、ネストしたオブジェクトを送ろうとすると、数値が文字列になり、nullが空文字になり、空配列がキーごと消える、という劣化が起こります。

ブラケット記法(NG)
ai_result[price]=1200
ai_result[dates][]=
JSON文字列化(OK)
ai_judgment_result=
{"price":1200,"dates":[]}

解決ネストしたオブジェクトをブラケット記法に分解するのではなく、JSON文字列化した1つのフィールドとして送ってもらい、サーバー側でパースする方式に統一しました。型情報を保ったまま運べるうえ、クライアント側の実装もシンプルになります。

05まとめ

今回いちばん学びが大きかったのは、「検証ロジックがアプリの外(CDNのエッジ)にある」仕組みは、ローカル環境だけでは正しさを保証できないということです。3つのハマりどころのうち2つは、実際にAWSのSDKを手元で動かして署名やヘッダーを1バイトずつ確認するまで発覚しませんでした。テストが通っていても、境界の外側で何が起きているかは別の話だと痛感しました。

一方で、Signed Cookieという仕組み自体は、いったん正しく発行できてしまえばアプリ側の実装は驚くほどシンプルです。画像1枚ごとに署名付きURLを発行する必要も、モバイル側で特別なヘッダーを付け回す必要もありません。ログインという1点さえ正しく作り込めば、あとは普段どおりの画像読み込みで「本人限定配信」が実現できる。地味ですが、良い設計だったと思っています。

この基盤は現在、社内のモバイルアプリチームと連携しながら実際のクライアント実装を進めているところです。実機での検証がまとまり次第、続報を書きたいと思います。

Rails AWS CloudFront Signed Cookie S3 アーキテクチャ

2026年9月3日木曜日

Amazfit HELIO STRAP購入

■発端

加齢のせいか、最近、眠りが浅くなってきた気がする。

色々調べてみたところ、世の中には睡眠の質を計測するアプリがあることを知った。

それで、良さそうなものを入れてみたのだが、以下のような難点があった。

・寝る前にアプリを起動する必要がある
・家族と一緒に寝ているせいか、自分には身に覚えのない「いびき」や「咳」が記録されていた
・一応、録音もされていたが、確認するためには課金が必要だった

 

 

 

ちょうどAmazonセールでポイントも貯まっていたので、何かしら睡眠を計測できる装置を買うのも良いかと思うようになった。

調べてみると、睡眠計測専用の装置もあるらしいが、数万円台のものが多く、かなり高い。

一般的なのはスマートウォッチで、安いものなら1万円未満のものもあった。

ただ、別に画面を見ながら操作をしたいわけでもないし、中国製の端末を身につけて、自分の個人データを計測することには少し抵抗がある。

そこで、最終的にたどり着いたのが「スマートバンド」というものだった。

 

■購入

初めはスマートリングも考慮した。

ただ、これもまあまあ高かったし、そもそも普段から指輪を使う習慣がない。

あまり指輪をつけたくないし、個人的には見栄えもあまり好みではない。

スマートバンドで調べると、GoogleとAmazfitあたりに絞られた。

サイズ感などはGoogleのものが良さそうだったのだが、最近発売されたばかりということもあってか、どこも品薄で売り切れ状態。

しかも、計測自体はできるものの、計測値を評価するためには課金が必要になるようだった。

一方、AmazfitはちょうどAmazonセールで10%ほど安くなっていた。

しかも、今まで貯めていたAmazonポイントで全額支払える。

ということで、Amazfit HELIO STRAPを購入した。

 

■Amazfit HELIO STRAP しばらく使ってみての感想

注文してからは、結構早めに発送された。

・今まで使っていた睡眠測定アプリと並行して使ってみた。寝る前にアプリを立ち上げなくても済むのは助かる。ただし、周りの音を拾う機能がないため、以前記録されていた咳・いびきについては、結局謎のままになってしまっている

・腕に何かを付けて寝たことがないので、これを付けたまま寝られるかが心配だったが、意外と普通に寝られた。ただし、ある程度しっかり手首につけておかないと、起きたときに緩くなっていた。今度、余裕があったら大きめのバンドを買って、足に付けても良いかもしれない

・HYBRIDCHARGEで総合的な「元気度」のようなものが分かるのは助かる。数値をどこまで信頼して良いのかは分からないが、自分が客観的にどのくらい疲れているのかが見えるのは面白い

・モデル名に「FIT」がついていることもあり、運動項目が充実している。普段、あまり運動していない自分でも、これを見ていると運動をして数値化したい気持ちにさせられる。運動する前に何の運動をするか選ぶようになっているが、残念ながら弓道はなかった。代わりにアーチェリーを選択している

・運動項目にスイミングもあるので、おそらく防水性能もあるのだと思う。ただ、高い機器を水の中に入れるのはやはり怖い。一応、旅行中にプールで使ってみたが、今のところは大丈夫そう

・一応、課金メニューは存在するが、確かに使わなくても特に支障はなさそう。睡眠健康評価は少し気になるので、どこかで一度、有効化してみるかもしれない

ちなみに、買ったタイミングで一番最初に気づいたのは子どもだった。

その後は旅行だったこともあり、ずっと付けていたが、誰も特に気づかなかった。

そういえば、着替えるときに妻が気づいていたような……。

2026年9月1日火曜日

「開発環境は止まっているはずなのに」— AWS Configコスト急増の犯人を追いつめた話

TL;DR

  • コスト削減のため夜間・週末に自動で止めているはずの開発環境で、AWS Configの利用料金だけが跳ね上がった
  • 「起動・停止の瞬間にコストが増える」という自然な仮説は、調査したら半分正解・半分不正解だった
  • 本当の犯人は、環境の停止処理がECSサービスの Application Auto Scaling を止めていなかったことによる、丸4日間ぶっ通しのタスク起動失敗ループだった
  • 最初の修正案もレビューで「まだ不十分」と指摘され、AWSの正式な「Auto Scalingの一時停止」機能に作り直すことになった

以下、調査の一部始終と、そこから得た教訓をまとめる。


背景

とあるWebサービスのdevelop/staging環境は、コスト削減のために夜間・週末は自動で止まるようになっている。具体的には、Lambda + EventBridge Schedulerで組んだ仕組みで、

  • ECS Fargateサービスを desiredCount = 0 にスケールダウン
  • RDS Auroraクラスタを停止
  • NAT用・踏み台用のEC2インスタンスを停止

という3点セットを実行し、平日朝に元へ戻す。よくある構成だと思う。

このスケジュールをしばらく無効化していた期間があり、再度有効化したところ、AWS Configの利用料金(Configuration Item記録件数に応じた課金)が急増した。「起動・停止イベントが増えたから、その分Configの記録も増えたのだろう」と考えるのが自然だし、実際そういう外部の事例もいくつか見つかる。

というわけで、原因を確定させ、直すことにした。

第一の仮説:起動・停止のたびにENIが作り直される

ECS Fargateをawsvpcネットワークモードで使っていると、タスクが再作成されるたびに新しいENI(Elastic Network Interface)が払い出される。これ自体はAWS::EC2::NetworkInterfaceというリソースタイプとしてAWS Configに記録される対象で、実際にいくつかのブログ記事でも「ECSタスクの頻繁な入れ替わりでConfigコストが跳ね上がった」という事例が紹介されている。

これを検証するために、調査専用の一時的なCloudTrail(管理イベントのみ、単一リージョン)を新しく作り、既存の設定には一切手を触れずに構築した。ついでにAWS Configのselect-resource-config(Advanced Query)やget-discovered-resource-counts、CloudWatchメトリクス(AWS/Config名前空間のConfigurationItemsRecorded)も使って、実際に何が記録されているかを定量的に追いかけた。

起動イベントの瞬間(数十分のウィンドウ)を見てみると、確かに記録の内訳はこうなっていた。

リソースタイプ件数比率
EC2::NetworkInterface最多約3割
EC2::SecurityGroup次点約2割弱
ECS::Service約1割強
EC2::Instance(NAT/踏み台)1割弱
その他(RouteTable/EIP/RDS等)残り

想定通り、ENI(と、それに付随するSecurityGroupやRouteTableなどの周辺リソース)が最多だった。「やっぱりこれが原因か」と一瞬納得しかけた。

ここで、地味に役立った教訓が一つ。select-resource-config(Advanced Query)は「各リソースの最新の状態」しか返さない。過去のある時点で何が記録されたかを調べようとしても、そのリソースがその後さらに変化していれば、古いタイムスタンプでの記録はヒットしない。「昨日の停止イベントを調べようとしたら0件だった」と一瞬焦ったが、原因はこれだった。過去の特定時点の記録を追うには、リソースIDを指定して履歴を直接取得できるAPI(get-resource-config-history)や、Config配信チャネル先のS3にある設定履歴ファイルを使う必要がある。

しかし、これでは説明がつかない

起動・停止イベント単体の影響は数十件程度で、確かに存在はする。しかし、Cost Explorerでコスト推移を見ると、環境が完全に停止しているはずの期間(週末含む、丸4日間)もコストが下がるどころか上がり続けていた

もし原因が「起動・停止イベントに伴う一過性のENI churn」なら、停止直後にスパイクしてすぐ収まるはずだ。しかし実際は、停止期間中ずっと高止まりし、日を追うごとにむしろ微増していた。これは「一過性のイベント」の説明では無理がある。「別の何かが継続的に発生している」と考えるべきだった。

寄り道:見当違いの仮説を検証して捨てる

真っ先に疑ったのは、「現在Configが管理しているリソースの総数」を見たときに突出して多かった、あるレガシーなリソースタイプ(過去に別件のコスト急増の原因になったことがあるもの)だった。しかし、そのリソースタイプ単体のCloudWatchメトリクスを見ると、直近ではほとんど動きがなかった。「総数が多い」ことと「直近の変化率が高い」ことは別物だと、指摘されて初めて気づいた。仮説は却下。

次に、「Config全体の記録件数」と「ENI(EC2::NetworkInterface)単体の記録件数」を日次で比較してみると、両者はほぼ同じ形(ベースラインの約15〜18倍に跳ね上がり、その後も高止まり)をしていた。しかも比率がずっと一定(全体のうち常に2〜3割程度)。ここでようやく「ENIが本命で間違いない、ただし発生源は起動・停止イベントとは別」という当たりがついた。

犯人探し:CloudTrailで「誰が」ENIを作っているかを追う

CloudTrailでCreateNetworkInterfaceイベントのdescriptionフィールドを見ると、完全に停止しているはずの1日分の記録が、すべてECSタスクのアタッチメントを示す形式(arn:aws:ecs:...:attachment/<uuid>)だった。しかもユニークなIDが数百件並んでいて、「同じ理由で1回だけ大量発生した」のではなく「何かが延々とタスクを再作成し続けている」ことを示していた。

不思議なことに、明示的なRunTask呼び出しは1日たった数件(既知の定期実行ジョブ分だけ)しかなかった。ここで学んだのが、ECSサービスがスケジューラ経由で内部的にタスクを再配置する場合、RunTaskではなくTaskCreatedという別の管理イベントとして記録されるということ。実際にTaskCreatedイベントの件数を見ると、RunTaskの数十倍あった。

ここから、作成されたENIの「サブネットID」と「セキュリティグループID」の組み合わせを集計し、既知のリソース(AZごとに2つのサブネットに分散配置されるのが通例)と突き合わせることで、犯人サービスを絞り込んだ。最終的にaws ec2 describe-security-groupsでセキュリティグループ名を引いて、内部向けAPIサービスであることが判明した。

根本原因:Auto Scalingが停止と綱引きしていた

該当サービスのdescribe-servicesのイベントログを見て、ようやく全貌が見えた。

(service ...) was unable to place a task. Reason: ResourceInitializationError:
unable to pull secrets or registry auth: unable to retrieve secret from asm:
There is a connection issue between the task and AWS Secrets Manager.
... context deadline exceeded.

タスクが起動すらできず、コンテナ定義に紐づいたSecrets Managerのシークレット取得でタイムアウトしていた。原因はシンプルで、環境停止時にNAT用EC2インスタンスも一緒に止めているため、プライベートサブネットからインターネット(Secrets Managerのパブリックエンドポイント)へ抜ける経路が失われていたからだ。

ではなぜタスクを起動しようとしていたのか。該当サービスにはApplication Auto ScalingがMinCapacity=1で登録されており、環境停止処理がこのAuto Scalingの設定に一切触れていなかった。停止処理はUpdateService(desiredCount=0)でサービスを一旦0にするが、Auto Scalingは自分の管理範囲(Min1〜Max2など)を守ろうとして、定期的にdesiredCountを1へ戻そうとする。

  • Auto Scalingがタスクを1つ起動しようとする
  • NATが止まっているのでSecrets Manager取得に失敗し、約13分でタイムアウト
  • ECSが即座に次のタスクを試みる
  • 以下、環境停止期間中(今回のケースでは最大4日弱)ずっと、13〜27分間隔で繰り返し

サービスのイベントログのタイムスタンプを丹念に追うと、この失敗ループは環境の起動処理でNATが復旧した直後にピタリと止まっていた。ここまで来ると、もう疑いようがない。

一度目の修正:レビューで「まだ足りない」と言われる

最初に考えた修正は素直なものだった。停止時にAuto ScalingのMinCapacityを0にし、起動時に元へ戻す。IAM権限もDescribeScalableTargets/RegisterScalableTargetの2つだけで済むし、実装もシンプル。コードレビューに出した。

すると、こういう指摘が返ってきた。

MinCapacityを0にするだけでは、Auto Scalingに登録済みの「スケジュールドアクション(毎日決まった時刻にMin/Maxを書き換えるアクション)」に上書きされてしまうのでは?

確認してみると、まさにその通りだった。当該サービスには「毎朝の営業開始前にスケールアウトする」「毎晩の営業終了後にスケールインする」という、Auto Scaling自体のスケジュールドアクションが別途設定されていた。これは環境の起動停止スケジュールとは完全に独立して毎日動く。つまり:

  • 環境を停止した直後の夜、Auto Scaling側の「スケールイン」アクションがMinCapacityを1に戻す
  • 環境の起動処理よりに、Auto Scaling側の「スケールアウト」アクションがMinCapacityを1に戻す(NAT起動よりも先に)

MinCapacityを直接書き換える方式では、この2つの独立したスケジュールに対して常に後出しじゃんけんで負ける構造だった。しかも、TerraformでこのMinCapacityを管理している場合、Lambdaが書き換えた値は次回のterraform applyで元に戻されてしまう(driftの元)という副作用まで指摘された。

二度目の修正:AWS標準の「一時停止」機能を使う

Application Auto Scalingには、まさにこの用途のための機能がある。RegisterScalableTargetAPIのSuspendedStateだ。MinCapacity/MaxCapacityの値には一切触れず、「動的スケーリング」と「スケジュールドアクション」の両方を丸ごと一時停止・再開できる。

# 停止時
autoscaling.register_scalable_target(
    ServiceNamespace="ecs",
    ResourceId=resource_id,
    ScalableDimension="ecs:service:DesiredCount",
    SuspendedState={
        "DynamicScalingInSuspended": True,
        "DynamicScalingOutSuspended": True,
        "ScheduledScalingSuspended": True,
    },
)

# 起動時(すべてFalseに戻すだけ)
autoscaling.register_scalable_target(
    ServiceNamespace="ecs",
    ResourceId=resource_id,
    ScalableDimension="ecs:service:DesiredCount",
    SuspendedState={
        "DynamicScalingInSuspended": False,
        "DynamicScalingOutSuspended": False,
        "ScheduledScalingSuspended": False,
    },
)

これなら、Auto Scaling側のスケジュールドアクションも含めて確実に止まるし、Min/MaxCapacityの値そのものは触らないのでTerraformとのdriftも起きない。IAM権限も変わらず同じ2つで済んだ。

あわせて、「環境起動後のサービス安定化待ちがタイムアウトした場合でも、Auto Scalingを止めたまま放置しない」ようにtry/finallyでresume処理を保証するようにした。一時停止したまま忘れられると、今度は逆に「業務時間中の正常なオートスケールが働かない」という別の障害になりかねないからだ。

教訓

  1. 「怪しいものが大量にある」と「直近悪化した原因である」は別物。総数のスナップショットだけで判断せず、時系列のレート(メトリクス)で裏を取る。
  2. AWS Configの「今のリソース状態」を返すAPIと、「過去の履歴」を返すAPIは別物。過去のある時点を調べたいなら履歴系のAPI(あるいは配信されたログファイル)を使う。
  3. CloudTrailの「明示的なAPI呼び出し」と「サービス内部の自動処理」は別のイベント名で記録されることがある。RunTaskが少ないからといって、タスクがあまり起動していないとは限らない。
  4. 「止める」処理を書くときは、それを上書きしうる自動化(Auto Scaling、他のスケジュール、外部の監視ツールによる自動修復など)が他にないか、必ず洗い出す。今回は「環境の起動停止スケジュール」と「Auto Scaling自身のスケジュール」という、独立に育った2つの自動化が噛み合っていなかったことが根本原因だった。
  5. コードレビューは通す。一度目の修正で「動くはず」と思っていたが、実際にはterraformの中身まで確認しないと見抜けない落とし穴があった。一人で完結させず、指摘をもらえる体制は大事。

似たような「開発環境の自動停止」を運用している人の参考になれば幸いです。